【疑問】消防士にはパワハラが多いのか?【実は複雑な現状】

消防士ってパワハラが多いんですか?リアルな消防組織の現状を知りたいです。

 

今回はこういった悩みにお答えします。

 

 この記事の想定読者

 

消防士にパワハラが多いのかどうか、本当のところを知りたい人

 

想定している読者は、上記のとおりです。

 

 この記事の信頼性

 

ボクは、東京消防庁で3年、田舎消防で14年働きました。

田舎消防ではパワハラを受けたこともあり、消防組織のリアルな現状を知っています。

 

この記事では、 消防士にパワハラが多いのかどうか、について解説します。

 

ちなみにこの記事の内容は、ボク自身の経験論を基にしています。あくまでもすべての消防組織がそうではない、ということを先にお断りさせていただきます。

 

 先に結論

 

消防士には相変わらずパワハラが多いです。なので、パワハラ撲滅に向けた地道な対策を今後もしていかなくてはなりません。

 

では始めますね。

 

【悲報】消防士のパワハラ対策の現状は切実

 

消防士のパワハラ対策の現状1:根本的にパワハラを打開できないザル研修

 

ボクが在職していた数十年前の消防組織って「パワハラ?モラハラ?え?何その言葉…あ~部下をいびることね…それ、パワハラって言うんだ」くらいのレベルでした。

 

まあ、相当ひどかったわけです。人間的なリテラシーが圧倒的に低い上司ばかりでしたから。

 

けど、時代も変わって今や「ハラスメント研修」が年に数回開催されている消防本部があると聞きます。(未だに全国各地の消防本部で「パワハラ」のニュースが取り上げられるのはホントにクソですが…)

 

ただし、疑問なのが本当に根本を解決するような真摯な研修がされているのかな?ってことです。

 

 

上記のツイートのように、要は消防組織という特殊な環境であることを踏まえた「ハラスメント対策」をしないと、ただの時間の無駄に終わってしまうってことです。

 

研修を受講し終えた上司が「あまり消防には合わない内容だったな…」なんて毎回言うようじゃ、ただの「ザル研修」ですよ、はっきり言って。

 

24時間年齢や性別が違ったもの同士が働く職場であり、日常空間の「消防署での勤務」と非日常空間の「現場活動」を繰り返す、という複雑な環境が消防組織です。

 

そういう特殊な職場環境を考慮した対策をしないと、あまり効果は期待できないんじゃないでしょうか?

 

消防士のパワハラ対策の現状2:パワハラに対する過剰反応

 

「パワハラ」って言葉や行為に反応しやすいのは、実は若手の消防職員だけではないような気がします。

 

むしろ若手からの「パワハラ密告」を恐れる上司が増えてきているのが最近の傾向です。

 

つまり部下に対して必要以上に気を遣ってしまった結果、きちんと「叱れる上司」が少なくなってきているってことです。

 

なぜなら、SNSやネットのおかげで「パワハラリテラシー」みたいなのものが若手の消防職員の中でも高まって、たとえば「課長のあの発言、パワハラじゃねえか?」とか「指導方法間違ってるだろ…」とか、上司をジャッジするようになったからです。

 

語弊を恐れず言うならば、気弱な上司に対して、もの言う若手署員が増えているわけです。

 

いや、この状況ってまだまだ少ないですよ。

 

ただ日本全国の消防組織は今、パワハラや不祥事撲滅に向けた組織改革の真っただ中なので、今後こういった「上司と部下の逆転現象」みたいなのが進むかもしれません。

 

その「逆転現象」の背景には以下の3つが考えられます。

 

パワハラを起こせば罰せられる可能性が大きくなった

 

1つ目は、全国各地で続く消防のパワハラ問題や不祥事を踏まえて、各消防組織の中でもパワハラに対する処分が確実に厳しくなってきていることが挙げられます。

 

つまりパワハラの加害者になれば、今や高い確率で処分されるわけです。そうなると昇任や給料にも影響しますからね、やっぱナーバスになるんでしょうね。

 

今までは、うやむやにできていた諸問題も、ボイスレコーダーが使用されたり、記録を取られていたり…いい気はしませんが実際ありますよ、そういうこと。

 

さらに今や、顧問弁護士やコンプライアンス相談窓口を設けている自治体がほとんどですので(ボクの田舎消防では退職直前にできました。)、所属を飛び越えて通報されたり…

 

所属を飛び越えて、自分の知らないところでパワハラの問題を通報されると、上司としてはものすごく困るわけです。(そもそも、若手から相談を受け付けないような職場環境を作っている上司や所属長が問題なんですが。)

 

自分たちの部下に対する管理能力を問われかねないですからね。

 

【能力の逆転現象】事務処理を若手署員に頼らざるを得ない

 

2つ目は、事務処理の増加によって、50代以上の「デキない上司」でもPCでもろもろの処理をしなきゃならないようになった、ってこと。

 

つまり「デキない上司」は、PCのスキルが高い若手の署員に頼らざるを得なくなったということです。

 

自分でスキルアップできれば問題ありませんが、そんなハングリーな50代の上司が消防署にいますか?いませんよね…(おられたらごめんなさい)

 

結果、メンタル的に部下にマウントを取られているような状況に陥ってしまいますよね。

 

「アイツにはまた助けてもらわないといけないから、あんまりうるさく言えないな…」みたいな。人間弱みを握られるとそんなものですから。

 

50代以上の消防職員って今までまともな事務処理をしてきていませんし、そもそも消防の仕事なんて経験値で何とかなっていました。

 

でも今や火災件数は全国的にも減少しており、火災予防業務や地域住民への防災指導、消防団関係事務などに仕事がシフトしつつ、それに伴う事務処理が増えてきています。

 

結果的に、消防署でもごくわずかながら「能力の逆転現象」が起きるようになったということです。

 

訓練や現場活動ができない上司が責められる

 

これは上記の「能力の逆転現象」とも通じますが、まともに訓練や現場活動ができない上司がディスられるようになった、ってことです。

 

今や全国の消防本部で消火隊の強化を図るための「部隊訓練」や「警防活動訓練」が実施されています。

 

この訓練は各地域によって多少の違いはありますが、体系的な消防活動をするためのマニュアル訓練的なもので、救急活動で言うところのプロトコールのようなものですね。

 

この手の訓練が地方の消防組織に普及し始めたのが、おそらく今から5、6年くらい前からではないでしょうか?

 

それまではまともな訓練していなかったですよ、はっり言って。新規の採用職員が入ってくれば、「お試し訓練」や「いびり訓練」をしていただけ。オッサン連中はというと、自分たちはできないくせに見ているだけ。

 

救助隊が訓練していると言えば、救助指導会強化訓練という名の「運動会」や「部活動」。

 

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特に今の50代以上の署員は、訓練をまともにしてこなかった連中です。しかも火災現場での活動と言えば、屋外から「鳥さし注水」をするだけ。

 

そこにはもはや、テクニックも理論もいりません。だって燃えている家に向かってただ闇雲に「大量放水」するだけですからね。まあ、10,000歩譲って言うならば、田舎の家は木造の土壁の家屋が多くて、そんな家に対しては有効ではありました…って、いつの時代だよ…

 

近年は木造住宅の構造も多様化してきており、とても外部からの放水では消火できなくなりました。外壁がガルバリウム張りの家なんか、そもそも外部から消せませんからね。

 

そういうこともあって「部隊訓練」や「警防活動訓練」が始められたんでしょうが、本当のところは「やらない」「できない」オッサン消防職員をこれ以上生み出さないためなのかもしれませんね。

 

実際訓練をやるとね、やっぱりできないんですよ。見ていて情けないもんです。いや、もちろんスゴイ50代もいますよ、稀に。けどほとんどが酷いもんです。まともに無線も使えませんし、面体の着装もできないオッサンがいますから。

 

最低ですよ、こんなレベルで「消防職員」を名乗っているんですから。

 

それに対して今の若手は実にクレバーです。

 

経験値は低いものの、今やネットで世界中の消火テクニックや理論を学ぶことができますから。現場数が減ってはきているものの、動画を用いたイメージトレーニングや、先ほどお話した「部隊訓練」をかけ合わせれば、それなりに実際の現場で動けるようになりますからね。

 

もちろん現場特有の危険因子を見抜く能力や、TPOに応じた応用力を身に付けるためには現場経験は必要ですよ。

 

けど、レベルの低い経験論のみを振りかざす、「デキない上司」よりよっぽどマシですよ、ってことです。

 

そりゃあ、ディスられるわけです。

 

【反論】とは言え消防士の世界には未だパワハラが蔓延

 

ただ残念ながら、令和に入っても消防職員の「パワハラ問題」が後を絶ちません。この理由を以下のように考えます。

 

消防士にパワハラが多い理由1:歪な年功序列

 

消防の世界って、何だかんだ言っても最終的には「歪な年功序列」に収まってしまいます。このことについては以下の記事でお話しています。

 

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上記の記事では、消防の世界では、「階級」「在職年数」「年齢」が三つ巴になっていて、人間関係や職場環境にひずみが生じていますよ、ってことを解説していますが、結局この「歪な年功序列」は完全には払拭できないかもしれません。

 

けど個人的には、完全になくす必要はないとは思いますよ。最低限の年功序列は必要ですから。消防ってあくまで現場仕事ですので、年数を重ねることで得られる能力があるからです。

 

ただし、この歪な年功序列を「伝家の宝刀」として使うなよ、ってことです。

 

下から意見を門前払いする風潮はさすがに少なくなりましたが、最終決定権は「階級」「在職年数」「年齢」がすべて上の人間。

 

極端な話、下っ端がいくら「これは白ですよ」と言っても、最終決定者が「それは黒だ!」と言えば黒になるわけです。

 

けど、露骨にそれをしてしまえば昨今の「パワハラ処分ブーム」に乗っかってしまうので、あくまでも「下っ端の意見は吸い上げていますよ、けどやっぱり最終的にはボクの意見ですからね、分かっているよね」的な感じで、物事は進んでいきます。

 

暴言を吐いたり、暴力を振るえば一発アウトですので、あくまでも下の者に半強制的に同意させるようなハラスメントが実際ありますから。

 

消防士にパワハラが多い理由2:閉鎖空間

 

消防士にパワハラが多いのは閉鎖的すぎる環境が原因

 

消防組織が閉鎖的なのは周知の事実ですが、何が閉鎖的って外部と接触することがほとんどない、という物理的な閉鎖空間であることはもちろん、組織の上層部に外部環境を取り入れる考え方やノウハウがないってことです。

 

たとえば、パワハラを無くすための対策を内部でシコシコとやっていても意味がないわけです。

 

専門機関をうまく取り入れれば解決できる糸口が掴めるかもしれないのにそれをやらない。

 

これは公務員特有の傾向でして、一番の原因は組織自体が「変化を恐れる」ってやつです。

 

前回も顧問弁護士に研修をやってもらったから、今回もそれでいいか…と。何をするのにも前例踏襲主義。何か新しい取り組みを始めようとすれば、起案→修正→修正→修正…の無限ループ。いつまで経っても決裁されない。

 

根回しがうまくいってなければ、最後の最後でどんでん返しを喰らって、すべてが水の泡となることも往々にしてある世界です。

 

これではいつまで経っても井の中の蛙です。

 

消防の閉鎖的な環境ではパワハラをも隠蔽してしまう

 

消防の閉鎖的な環境って、実はパワハラを起こしてしまうだけではなく、パワハラの事実自体を隠蔽してしまう傾向があります。

 

なぜなら、ひとたびそういった問題が表沙汰になれば、上層部がものすごく困るから。

 

自分たちが処分を受けることはもちろん、市長、関係部局への報告、当事者間の問題解決…こういったことでものすごく時間と労力を消耗してしまうからでしょうね。

 

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上記の記事内でもお話していますが、パワハラや不祥事を起こすと、次年度の消防予算の「予算取り」が危うくなってしまうこともありますからね。

 

まあ、罰せられる上層部ってほとんどが、定年退職のゴールライン目前の人たちばかりですから、「俺が退職するまでは、波風立てないでくれよ」ってやつですね。退職金に目がくらんでいる人たちですから、どうしようもないです。

 

消防士にパワハラが多い理由3:人間性

 

消防士のパワハラには「パワハラ」ブランド職員の存在

 


上記のツイートのとおりです。

 

よくパワハラや不祥事は「組織的な問題」とされますが、半分は正解で半分は間違いです。

 

なぜなら、組織内の対策ではどうしようもない人間がある一定数いるからです。その人間がパワハラや不祥事を起こさないように組織が骨を折るのは、少々観点がズレています。

 

確かににパワハラや不祥事を包括的に対策することは組織の役割です。

 

しかし、組織内に長年居座り続ける「パワハラブランド」職員に対して具体的な対策もせず、なぜうやむやにしておくのか?ってことです。

 

そもそもパワハラをする人って決まっているんです。それは組織内でも周知の事実でして、具体的な対策をしていないだけ。

 

問題を起こさないような部署に異動させたり、問題が起こればまた違う部署へ…こんなのを繰り返しているだけで、根本的な解決をしていません。

 

ボクはこの手の職員を数々の所属で見てきました。残念ながら、東京消防庁で在籍していた時もいましたし、田舎消防に転職してからもです。

 

酷い場合は、口頭注意処分を受けたにも関わらずパワハラを繰り返す職員もいましたから。

 

当時この事実が報道されていなかったのがいけなかったのかもしれませんね。

 

とにかく、表面的なパワハラ対策だけではどうにもならないってことです。

 

消防士のパワハラには「ワシらの時代はな…」上司の存在

 

50代の上司たちって、パワハラ育ちというか、そもそもパワハラの概念がなかった時代を過ごしてきているので、根底にあるのは「消防=理不尽」というスタンス。

 

特に若手職員に対する指導なんて、下手すれば単なる「イビリ」レベルになってしまうわけです。

 

「ボクたちの時代は、先輩に殴られながら指導されましたよ。だからこそ強くなれました。それに比べて今はどうですか?ちょっと甘っちょろいんじゃないですか?そんなんじゃ、消防人として強くなれませんよ。だから、もっともっと苦労してくださいよ。」

 

こういうイカれた感覚なんです、この人たち。

 

だから、未だにパワハラをやってしまう、というか気付かないこともあります。「コミュニケーションだと思っていた…」なんて弁解はまさにそれです。

 

【提案】消防士のパワハラ撲滅対策

 

現職時代、パワハラを撲滅させる対策をあれこれ考えていた時期がありました。

 

庁舎内に監視カメラや各職員にボイスレコーダーを付けたらいいのかな…とか、市民オンブズマンみたいな人を雇えばどうかな…とか。(本来のオンブズマン制度ではないですが、監視役を付けたらどうかってことです。)

 

けど、どれも現実的ではないですよね。予算もかかるし、そもそも「死角」がありますから無理な話です。

 

ただね、現職時代にうっすらと気付いていたことなんですが、消防署って外部からの来客に対して過剰な反応を示す傾向があるんです。

 

たとえば、「今日は〇〇工場の工場長が年頭のあいさつに来られるから、ビシっとあいさつしろよ!」なんてことを上席が言うんです。

 

っで、そういう時ってさっきまで事務所でウダウダ言っていた上司は「いい子ちゃんモード」になるわけです。

 

まあ、消防のイメージを崩したくないんでしょうね。そりゃあ、来客からすれば「こんにちは!お疲れ様です!」って署員が一斉に立って挨拶をすれば悪い気はしませんもんね。「へ~、さすが消防士さんですね~。礼儀正しいですね~。」ってなります。

 

話は逸れましたが、要は「外部の人間に過剰反応する」ってのを逆手に取ったらいいわけです。つまり常々外部の人間を消防署内に漂わせておくわけです。(スミマセン、言い方悪くて…)

 

たとえば、インターンシップ。消防士を目指す方や、消防士の仕事内容に興味のある方に職場体験をしてもらう制度。東京消防著をはじめ、今や各地の消防本部で実施されつつあります。

 

これを義務付けてしまえばいいんですよ。そして職場体験される方に包み隠さず話す。

 

「うちの消防本部は田舎の消防本部なので、東京消防庁のようなイメージではなく、何でもやらないといけませんよ」とか「過去にパワハラとか不祥事が続いているので、今は組織の建て直しをしているんですよ」とか。

 

一般の方に組織事情を公開することでパワハラや不祥事の抑止力にはなると思います。

 

本当は、消防組織の「外部評価制度」みたいなのを作ればいいんでしょうけどね、ISOみたいなやつですね。

 


このことについては、上記のように以前ツイートしています。

 

パワハラや不祥事が蔓延している組織って、市民からの信用を失くすとはもちろん、少なからず予算の締め付けが実施されます。それだけならいいですが、パワハラで実際に職員が辞めたり、精神疾患となって長期休暇を取ったり…そうなると人員不足を招いて、結局は組織が円滑に運営されなくなります。

 

っで、職場環境が悪いから、またパワハラや不祥事が起こる、みたいな悪循環です。

 

そうならないためには、このような評価制度もアリだと思いますね。

 

消防士にはパワハラが多いのか?のまとめ

 

消防士のパワハラ対策の現状は意外にも切実です。

 

  • 根本的にパワハラを打開できないザル研修が繰り返されている
  • パワハラに対して過剰なまでに反応じてしまう上司が増えている

 

上記のとおりです。

 

とはいえ、消防士の世界には未だパワハラが蔓延しています。

 

  • 階級」「在職年数」「年齢」が三つ巴となった歪な年功序列
  • 隠蔽体質のある圧倒的な閉鎖空間
  • パワハラを起こす人間は決まっているという問題

 

上記の3つの理由により消防組織からパワハラや不祥事が途絶えることはありません。

 

しかしながら、消防士のパワハラ撲滅に向けた対策を我慢強く続けていく必要があります。

 

なぜなら、市民の期待を裏切り続けてきたことを真摯に受け止め、これ以上日本の消防組織が衰退していかないようにするためです。

 

より良い消防組織を作っていくために、現職の方には是非頑張って欲しいと思います。

 

今回は以上となります。