【消防士のあるある】機関員(運転手)はこんなことを考えています

消防車の機関員(運転手)って緊急走行しているとき、ぶっちゃけどんなことを考えていますか?

リアルなあるあるネタとかこっそり聞いてみたいです。

 

今回はこういった疑問にお答えします。

 

 この記事の想定読者

 

消防車の機関員(運転手)のあるあるネタや、リアルな気持ちを知りたい人

 

想定している読者は、上記のとおりです。

 

 この記事の信頼性

 

ボクは消防士として17年間働きましたが、機関員歴はトータルで10年以上でした。

 

この記事では、消防車の機関員(運転手)のあるあるネタについて解説します。

 

消防士のあるある【機関員編】①:まずは火災指令で寿命を縮める

 

火災指令は各消防本部によって違いがあるものの、「ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、…」のような電子音でして、かなり脳に突き刺さるんですね。

 

これ、ホントに心臓が3Dに飛び出すんですよ。昼間はまだしも仮眠中となると、自分の心臓が胸を突き破って仮眠室の天井に「ドーン」ってぶち当たるくらいです…ハハ…もうこればっかりは生理現象なのでどうしようもありません。

 

将来的には消防の世界はこれからますます高齢化が進みますし、定年退職が65歳まで引き上げられることは濃厚です。そうなると近い将来「60歳消防隊員」が間違いなく現れます。

 

60歳となると正直どれだけフィジカルが強くても、そろそろ内臓機能や循環器機能が低下してきます。そんな状態の「老人消防隊員」が真冬の仮眠中に「ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、…」の音を聞くとどうなるか…控え目に考えてもヤバすぎますよね…

 

東京消防消防科学研究所が「出場ベル等の音が消防職員に及ぼす心理的・生理的影響に関する研究 について」 で研究結果を発表されていますが、将来的には「心理的に最小限の負担で最大限聞き取れるような」周波数と音域を用いて「小鳥のさえずり」のような火災指令が望まれるかもですね。

 

消防士のあるある②【機関員編】:指令端末のマウスをジャックする

 

消防署には指令端末というものがあって、火災指令が出されると地図と場所がモニターに表示されるようになっています。マウスを使うとルート・消火栓・防火水槽の位置を確認できます。

 

消防車のハンドルを握る「機関員」にとっては、火災指令が流れると「場所・ルート・消火栓」を真っ先に確認しないとならないんです。そりゃ、そうですよ、自分が消防車を運転するんですから。

 

隊長によってはみんなで「場所・ルート・消火栓」を確認しような~、って方おられてそれはそれでありがたいんですが、「機関員」を任されたらぶっちゃけそんなのに甘えてられません。消防車を最速で現場まで走らせて、水利を確保して、放水する…ここまでははっきり言って、どの隊にも負けたくないし、はっきり言って必死です。

 

だから火災指令が流れたら、指令端末の前に真っ先に陣取ってマウスの主導権を握ります。「場所はここだから、ルートはこうで、消火栓はこれを取りますよ~」的な感じで隊長と隊員に打診する感じですね。そのためには日ごろから地水利に精通していないと話にならないんですが、これは自分でスキルアップしていくしかないですね。

 

消防士のあるある③【機関員編】:消防車への乗り込みはわりとゆっくり

 

出動指令がかかると、消火隊員は防火衣着て、防火フード被って、防火ヘルメット被って、空気呼吸器背負って、分厚い手袋はめて…ってこれを1分以内でやらなきゃいけないんではっきり言ってかなりシビアです、

 

だってモタモタしていると消防車の出動が遅れるわけですからね、そりゃもう必死ですよ。

 

ただ「機関員」となると事情は少し違っています。もちろん防火衣も着ないし(分厚い防火衣は運転に影響しますので、現着してから着装する場合はあります)空気呼吸器を背負う必要もないし、消火隊員よりもはっきり言ってアドバンテージを持っています。

 

なので、この消防車に乗り込むまでの間は、先ほどの「場所・ルート・水利」を頭の中で冷静に整理します。あくまで冷静にです…他の隊員がにぎやかに「防火衣着装!ヘルメットよし!手袋よし!」なんて言ってても、何食わぬ顔して冷静な精神状態を保ちます。

 

なぜかっていうと、緊急走行は落ち着いた気持ちでないと絶対にうまくできないんです。サイレンは賑やかだけど心は静か、みたいな感じです。ちょっとでも頭に血を登らせると、正確なアクセルのオン・オフ、スムーズなシフトチェンジ・確実なブレーキ操作なんてできません。

 

はたからみてりゃ、消防車って「ウーカンカン」って派手に走っていますが、意外と消防車を運転している当に本人は静かなもんですよ。

 

消防士のあるある【機関員編】④:車列の1番手は燃える?

 

自分の消防署の管轄内で火災指令がかかると、出動するのはほぼ全車両です。(もちろん各消防本部の出動計画によって違います)

 

ボクが在籍していた地方消防のとある消防署では、マンションなどの中高層建築物で火災が起こると、ポンプ車、タンク車、救助工作車、はしご車、指揮車、救急車の計6台が出動していました。

 

つまりこの6台が車列を組んで火災現場のマンションまで緊急走行するわです。

 

ボクがポンプ車の機関員をしていた当番日、この類の出動がありまして、出動時に大隊長から車列の1番を命ぜられました。この時はね、一機に緊張感が高まります。そりゃあね、絶対にルートを間違えてはいけないわけですから。自分が間違えれば後続車両も間違える可能性がありますからね。

 

それと、車両によって全然スペックや走破性能が違います。だいたい平成1桁台くらいの古いポンプ車は、NA(ノーマル アスピレーション)と言いまして、いわゆるターボがついていません。この意味が分かりますよね。

 

走らないんですよ、ホントに。タンク車や救助工作車なんて重たいけど、ターボ付きなんで走る走る…なので車列の1番がポンプ車だと惨めなもんです。(いや、決してそうではないんですが機関員としてはやっぱり…ってことです)

 

ただね、走らないなら走らないなりにテクニックを使うわけでして、タコメーターを見つつ「パワーバンドのおいしいところ」でシフトチェンジをします。さらに「ヒールアンドトゥ」ができるといいんですが、公用車ですのでそれはさすがに。

 

だいたい緊急走行の時ってメンタルコントロールがきちんとできていないと、レッドゾーンギリギリまで引っ張ってしまいます。

 

そうすると、逆に加速できない場合がありますよね。それを避けるに、シフトチェンジ、アクセルワーク、ブレーキ操作に命を懸けていました。スミマセン、ちょっと大げさでした。

 

消防士のあるある【機関員編】⑤:道を譲ってくれたら超うれしい

 

緊急走行していたら、一般車両の方がなかなか気づいてくれない場合がありまして、気の荒い隊長だと助手席で「〇×△※☆…」とちょっと下品な独り言を言ったりしています。

 

けど、消防車や救急車のサイレンの音って意外と聞こえないんですよね。今の車は気密性が高くなっているし、車内のスピーカーの性能を上がっているので、音楽なんか聞いているとやっぱりサイレンは聞こえません。

 

そうすると今度は隊長がマイクを使ってくれるんですが、あれもぶっちゃけ何を言っているのか分かりませんよね…現職の時からどうにかならないのかな…って思っていたので、個人的にはサイレンを鳴らしながらのマイクパフォーマンスに効果は期待していいませんでした。

 

なので緊急走行ではサイレンに頼らず、できる限り一般ドライバーの方を迷わせないような「分かりやすい緊急走行」をするわけです。

 

たとえば、反対車線に出るときはかなり手前から大きく出たり、加速や減速、ハンドリングをあえてオーバーにしてみたり…

 

若手の機関員に多いのが「安全運転=ゆっくり走る」でして、確かにゆっくり走るのは悪くはないですが、それだと一般ドライバーの方を迷わせて逆に危ない場合もあります。「自分が行くときは行く、相手を行かせるときは行かせる」くらいの緩急をつけた運転をするのがベストです。

 

とりわけそういう運転をしている中で、道を譲ってもらえたり、一般車両とうまく呼吸が合う瞬間があるんですね。そうするとね、機関員としてはこの上なくうれしいわけです。心から「ありがとう!」って思いますし、実際に軽く手を挙げる場合もあります。

 

ボクの経験論ですが、現場に安全に最速で到着するためには、一般ドライバーに認知してもらいやすい運転を心がけるのがベストかなと思いますよ。

 

消防士のあるある【機関員編】⑥:バイクがスリップストリームを仕掛けてくる

 

消防車や救急車で走っていると、1年に1回くらいはバイクに追尾されてしまいます。いや、もちろんダメですよ、絶対に。

 

救急車の運転手を怒らせるからとか云々じゃなくて(いや、ぶっちゃけ怒ってますよ…)立派な道路交通法違反になりますからね。

 

正確には、道路交通法の「第40条 緊急自動車の優先」と「第41条の2 消防用車両の優先」から「緊急車妨害等違反」となる可能性があります。

 

これはオフレコですが、その昔ボクが救急車の機関員をしていた頃、緊急走行中に追尾してきたバイクを止めて、バイクの運転手に大声で「◯✕△☆※…」って怒鳴って説教していた隊長がいました。

 

その隊長はプライベートで空手をやってた方でして、身長190cm、体重100kgくらいあったので、バイクの運転手にはそこそこ恐怖を味わって頂いていた思い出ですね…ハハ…オフレコですよ…

 

消防士のあるある【機関員編】⑦:消火栓が開かない!

 

火災の時に限って消火栓の蓋が開かないんですよ…ホントに凄い確率です…消火栓点検はやってても、不可抗力ってヤツです。何回も何回も車に踏まれると、いわゆる「蓋がかちこむ」という状態になります。

 

車が消火栓の蓋を踏むと振動でズレ込みます。もちろんそういうことを考慮して作られていますが、それでもそのズレ込んだ隙間に砂やら石やらが入り込むと、まあ開かない…サビてくるとなおさらです。

 

これがね、現場で起こるんですよ…ウソのようなホントの話でして、まあ地獄を見ます。大の大人が2人がかりでやってもダメ…その時は蓋が割れるくらいバールで叩くのですがダメなものはダメ…

 

ボクの場合は転戦したことがありますが、やっぱり相当メンタルにきます。だって、野次馬の方々の目もあるし、そもそも消火活動が遅れてしまいますからね。

 

昔の人は「蓋を叩くな!割れるぞ!」って言いますが、最近のは「ダクタイル鋳鉄」っていう特殊な鉄蓋が使われていますので、まあそんな簡単に割れるもんじゃないです。

 

ボクはいつも消火栓部署した時、「お利口さんな消火栓であってくださいね〜」って圧倒的に祈っていました。ハハ…思い出すだけでもおケツに汗びっしょりです…

 

消防士のあるある【機関員編】⑧:放水開始が活動完了?

 

無事に水利部署できて、ホースラインが整い、本格的な放水が開始されると、機関員の仕事の8割は完了となります。

 

あ、誤解しないでほしいのですが、もちろん放水圧力の調整や、不足の事態に対応するため、連成計や圧力計との「にらめっこ」が続きます。

 

ただ、水量の不安定な自然水利(水深が浅い川などですね)に部署した場合を除いては、機関員が行う作業としては、無線内容の把握とスロットル操作くらいです。

 

しかも、現代の消防車ってポンプ性能がめちゃくちゃ高い上、自動的に圧力調整ができる車両もあるため、ぶっちゃけ無人でもイケるんじゃないか、っていうレベル。

 

機関員がほんの少しだけ「ホッ」とできるのは意外にも放水が始まってからなんですよ。

 

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